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18.01.12

CAS(Compliance Assurance System)構築手順について

明けましておめでとうございます。
 このコラム欄も2006年10月から11年余継続して担当させていただいております。これからも読者の皆様にお役に立てるようにコラムの執筆者、FAQの執筆者共々努力をしてまいります。
 今年もよろしくお願いします。

1.CASの要求

2006年5月に“RoHS Enforcement Guidance Document”1)が公開されました。当時はRoHS(I)指令の執行(2006年7月1日)直前で、企業対応の情報が少なく、貴重な情報として利用されました。
 このガイダンス文書で「生産者自己宣言(self-declaration by producers)」の原則に安堵と戸惑いを感じたことを思い出します。
 ガイダンス文書第2章で「RoHS適合文書(RoHS Compliance Documentation)」があります。Compliance Documentationは順法の概要の文書作成、記録などの作業を指すのですが、“Documentation”と“Documents”の差を認識しないで、第3章の「サンプリングと試験結果(Sampling and Testing Issues)」の対応が重視されました。
 第2章のDocumentationとして、フロー図が示され、“process-based documentation”の存在が確認されています。大手企業にはRoute AとしてCASの構築が必須となっています。
 CASの要件は「自社及びサプライチェーンを含める」「 組織の品質管理システムに順法を正式に定義したプロセスとして統合する」ことです。
 ガイダンス文書はRoHS(I)指令のガイダンス文書であって、現行のRoHS(II)指令には合致しないのではと思われがちです。ガイダンス文書の内容を改めて確認しましたが、2006年頃から一貫して順法の基本的な考え方は変わっていないようです。
 CASの確証(Evidence of Active Control of the CAS)として、RoHS(II)指令の整合規格EN50581:2012で示しているサプライヤーからの順法文書の「RoHS指令特定有害物質に関する材料宣言」「適合宣言」「分析報告」が入っています。
 Route Bは、小規模企業が利用できますが、順法の「材料宣言(materials declarations)」は、購入者による妥当性の評価がセットになっています。
 ガイダンス文書では、大手企業に「生産者自己宣言」として通常のマネジメントシステムにRoHS指令の要求事項を統合したCASを求めています。
 RoHS(II)指令はニューアプロ―チ指令になり、第7条(製造者の義務)で決定768/2008/ECモジュールAの手順による内部生産管理手順(通称自己宣言)を要求しています。
 モジュールAの製造(Manufacturing)の要求は「製造者は、製造工程及びその監視が、製造した製品を技術文書(Technical Documentation)及び適用される法令への要求事項に適合していることを確実にするために必要とするあらゆる措置を実施する」ことです。
 製造工程及びその監視は“ものつくり”全般を指します。
 RoHS(II)指令第7条(e)では、「製造者は適合を維持するために、量産品に関する手順が整っていることを確実にする。設計変更、特性変更や宣言時に使用した整合規格や技術仕様の変更を適切に考慮しなくてはならない。」としています。
 整合規格EN50581(有害物質の使用制限に関する電気?電子製品の評価のための技術文書)の4.3.1.(製造者によって実行されるべきタスク)として、次の4項目のタスクの実行を要求しています。
  (1)必要とされる情報の決定(4.3.2項参照)
  (2)情報の収集(4.3.3項参照)
  (3)その品質および信頼性に関する情報の評価およびそれを技術文書に含めるかどうかの決定(4.3.4項参照)
  (4)技術文書が引き続き有効であることの保証(4.3.5項参照)
 4.3.2項(必要な情報の決定)では、以下を要求しています(部分訳)。
 必要とする技術文書の種類は、製造者の評価に基づくべきである。
  a)材料、部品、半組立品に制限物質が含まれている可能性
  b)サプライヤーの信用格付け
 4.3.2項の注に「このアセスメントと決められた手続きは品質マネジメントシステムかその同等システムの一部に組み入れることができる。」があります。日本では品質マネジメントシステムとしてはISO9001(品質マネジメントシステム-要求事項-)が一般的です。

2.リスクアセスメント

制限物質が含まれている可能性は、EN50581では、「製造者の技術判断による」とし「技術情報によってよい」としています。
 技術情報としてはIEC62321-2(分解、分離及び機械的サンプルの調製)のAnnex BにRoHS指令の特定有害物質の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB及びPBDEの含有の可能性を主要なコンポーネント、材料について示されています。
 企業では、図面や部品表を見てリスクを見積もることになります。
 例えば、図のような設計図で、材料指定や工程指定が示されています。
 図の部品について
   材料:鉄、ステンレス、真鍮
   表面処理:めっき、塗装、処理なし
 の組み合わせで評価します。
 材料では、金属材料のJIS規格で含有の可能性を確認できます
   鉄:JIS G 4051 S45C 鉛 添加なし
     JIS G 4051 S45CL 鉛 0.1~0.3%
   真鍮:JIS H 3250  C3604 鉛 1.8~3.7%
      JIS H 3250  C6804 鉛 0.1%以下
 表面処理では、処理により異なります。処理剤のSDSなどから確認できます。
   クロメート処理:六価クロム処理と三価クロム処理
   めっき:電気めっきと化学めっき
   塗装:塗料の種類
 材料と工程のマトリックスでIEC62321-2 Annex Bのように、含有の可能性をH、M、L、-の4段階で決定できます。
 リスク要素としては、サプライヤー、部品・材料の生産者、工程、重量、個数、原産地国などもあります。数多くのリスク要素に重みをつけることも必要になってきます。
 これらリスクの見積もり結果から、確証データを決定することができます。

3.マネジメントステムへの統合

製造工程及びその監視は“ものつくり”全般に要求されます。“ものつくり”の手順が、ISO9001で整理されていれば、“ものつくりフロー”(いわゆる品質保証体系図)が5W1Hでまとまっています。
 “ものつくりフロー”にRoHS(II)指令の要求事項をマッピングしていきます。
 マッピングすべき事項は、表のように要求事項を箇条書きにしたものについて、該否を判定し、該当する場合は“ものつくりフロー”に書き込みをして、最終的には文書化(手順書)します。
 例えば、RoHS(II)指令第2条で適用範囲が示されています。新製品を開発するときに、その製品がRoHS(II)指令に該当するのかを評価しなくてはなりません。誰が、どの段階で、どの様に決定するのか、“ものつくりフロー”上に記載(マッピング)します。(参考文献1)
 実際には、EU RoHS(II)指令以外に中国 RoHS(II)管理規則やREACH規則なども同様にマッピングすることになります。
 マッピング手順の詳細は紙数の関係でこのコラムでは割愛しますが、マッピング手順書(品質保証体系図への法的要求事項のマッピング手順~TM法~)、EU RoHS(II)指令、中国RoHS(II)管理規則、REACH規則の要求事項を箇条書きは、(一社)東京環境経営研究所2)の会員ページ(登録のメールを送るだけで閲覧が可能)で公開します。

4.検査から仕組みで保証

必要とされる情報の決定は、リスクにより決定することを整合規格EN50581で要求しています。日本企業の多くはリスクの最終化を狙って、「材料宣言」「適合宣言」「分析報告」をセットで要求する事例が多く見られます。
 サプライヤーの検査結果、自社の受入検査で順法確認をするのが、主流となっています。
 全数検査ができないことは自明のことです。この対応がISO9001への法的要求事項の統合です。多くの企業では、ISO9001:2015 8.3.3項(設計・開発のインプット)のc)法令・規制要求事項にRoHS(II)管理規則を含めることで対応しています。
 CASはものつくり全般について要求していますので、少なくとも8.1項(運用の計画及び管理)の運用計画(Operational planning)としてプランニングする必要があります。
 1987年3月にISO9001 Ver1が発行されました。背景にはEU(当時はEC)の経済統合による品質重視があり、購入者と供給者の二者間の取引で用いることが念頭にありました。(参考文献2)
 1987年当時の日本は、バブル景気で生産も活発で、製品はすべて検査して品質を確認する品質管理の取り組みも限界にきていました。このような時に、仕組みで品質を保証するとするISO9001が登場しました。品質管理から品質保証への移行です。
 仕組みで品質が守れるのか、検査をしないで品質が確認できるかとの論争が多くの企業で行われました。2018年にこのような論議をしている企業はないと思います。
 品質は仕組みで保証するのが当たり前になっています。
 特定有害物質の非含有保証はどうでしょうか。1987年以前の品質管理の域を脱していない気がします。
 特定有害物質の非含有は仕組みで保証するCASが流れです。このコラムが、読者の皆様のCAS構築でご参考になれば幸いです。

なお、今回のコラムはCASの具体的取組みをご紹介しました。CASの構築に関連するセミナーは、東京都産業技術研究センターMTEP3)や神奈川県立産業技術総合研究所 人材育成部4)で来年度(2018年4月以降)も企画されると思います。

(松浦 徹也)

参考
文献1:規制化学物質のリスク管理(日刊工業新聞社) 第1章
文献2:品質保証の国際規格 (監修 久米 均 日本規格協会 第9刷 1993.12.15)
1)https://www.epa.ie/pubs/advice/waste/rohs/RoHS%20Enforcement%20Guidance%20Document%20-%20v%201%20May%2020061.pdf
2)https://www.tkk-lab.jp/
3)http://www.iri-tokyo.jp/site/mtep/
4)https://www.kanagawa-iri.jp/human_res_devl/res_human_devl/edu_h29/ed29_seminar_06/

関連参考情報
コラム:2013.05.17 EU RoHS(II)指令とISO9001の関係(1)
コラム:2013.06.07 EU RoHS(II)指令とISO9001の関係(2)
コラム:13.11.01 RoHS(II)指令の整合規格EN50581(2012)が求めるサプライチェーンマネジメント(1)
コラム:2013.11.15 RoHS(II)指令の整合規格EN50581(2012)が求めるサプライチェーンマネジメント(2)
コラム:2014.01.10 自律的マネジメントの奨め

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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