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ここが知りたいRoHS 指令

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17.11.02

フタル酸エステル類の移行に関連する文献調査

フタル酸エステル類に関するご質問が増えております。専門性の高い内容で、法律の解釈、解説の域を超えていますので、有識者にご検討をいただいています。有識者の見解は今後のコラムで発表していただく予定ですが、関連文献を調査しましたのでご紹介します。
 フタル酸エステル類に関する代表的な法規制は、2017年10月6日のコラム「フタル酸エステルの規制状況」をでご確認ください。

1.フタル酸エステル類の用途

経済産業省生産動態統計月報(2017年8月統計)1)での生産量は、ポリプロピレン(24%)、ポリエチレン(20%)、塩化ビニル樹脂(13%)で、この3樹脂で57%になっています。
 ポリプロピレン(Polypropylene:PP)は、家庭用品、電化製品、自動車部品、包装材料、繊維、文具などに使われています。
 ポリエチレン(Polyethylen:PE)は、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene HDPE)、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene LDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low density Polyethylene LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight-Polyethylene UHMW-PE)などに分けられます。
 PEは、レジ袋、ゴム袋などの日用雑貨などに使われています。
 塩化ビニル樹脂(Polyvinyl Chloride PVC)は、家庭用品、玩具、日用雑貨、配管、壁紙などに使われています。
 樹脂には、耐候性、耐衝撃性や硬度調整などのために、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤など)、抗菌剤、防カビ剤、難燃化剤、強化剤や可塑剤などの様々な化学物質が組み込まれます。
 可塑剤とは、塑性を増大させて軟らかくするために加える物質の意味で、PVCは常温では堅いので、可塑剤を入れることで柔らかくなります。PVCの可塑剤としては、DEHP(45%)、DINP(30%)やDIDP(1%)などのフタル酸エステル類が使用2)されます。
 フタル酸エステル類の有害性は、例えば、DEHP(CAS No.117-81-7)のGHS分類によるC&L Invenotory3)では、生殖毒性 1Bとなっています。厚生労働省職場の安全サイトのSDS4)では、許容濃度(ばく露限界値、生物学的ばく露指標)として、日本産業衛生学会(2005年版)の値の5mg/m3を示しています。

2.フタル酸エステル類の移行性問題

フタル酸エステル類が話題となったのは、平成12年6月14日厚生省生活衛生局食品化学課の課長通知「塩化ビニル製手袋の食品への使用について」5)です。課長通知の別添で次の記述があり、TVや新聞で大きく取り上げられました。

(1)市販弁当1食からのDEHPの検出量 322μg~4,306μg(平均1,768μg)

  • 弁当への移行の主たる原因が塩化ビニル(以下「PVC」という。)製手袋であることが判明した。

(2)PVC製手袋で食材に接触する模擬実験の結果

  • 模擬実験において,DEHPの移行が確認された。
  • 移行濃度は消毒用アルコールの併用により上昇し、市販弁当中のDEHPのかなりの部分がPVC製手袋に由来すること、及びPVC製手袋によるDEHPが瞬時に高濃度で起こることが認められた。

課長通知では、EUのTDI(Tolerable Daily Intake:ヒトがある物質を生涯にわたって継続的に摂取した際に、健康に悪影響を及ぼすおそれがないと推定される1日体重1kg当たりの摂取量)として、37μg/kg/dayを参考値として示しています。
 厚生労働省の審議会で、器具及び容器包装並びにおもちゃの規格基準の改正が提言6)され、ポリ塩化ビニル製器具・容器包装からの食品へのDEHPの移行について実証し、玩具の規制も同時に規制強化されています。
 EUでは食品接触材料規則(規則1935/2004)の特定措置として、プラスチック材料および記事のための特定のルールとしてプラスチック規則(PIM)(規則10/2011 食品と接触することを意図したプラスチック材料および成形品規則)を定めています。PIMのポジティブリストにDEHPは収載されており、移行量1.5mgとなっています。
 このようにDEHPに代表されるフタル酸エステル類は、食品などへの移行が懸念され、規制強化がされてきています。

3.移行に関する論文

RoHS(II)指令の対象製品の多くは、家電に代表される機器です。食品接触することのない機器での移行を食品接触材料規則と同じにするのかが悩みどころです。
 家電機器からの移行に関する研究報告書は幾つか発行されています。

(1)「材料表面に密着させた吸着材へのフタル酸エステルの移行」7)
 この研究では、IPA(Scheme of Interfacial Passive Adsorption)法を考案し、実験をしています。IPA法は、直径47mmの吸着ディスクを試料に密着させ、上部をステンレス製のディスクカバーで覆って実験をしています。
 実験条件は20℃、湿度50%でPVCシートに1~14日間密着させ、GC-MSで分析しています。対象のフタル酸エステルは、DMP、DEP、DNDP、DEHPです。結果は時間とともに吸着量は増加していますが、DMP、DEP、DNDP、DEHPで差異があります

(2)「家庭電化製品・OA機器から発生するフタル酸エステル類及びリン酸エステル類」8)
 前記研究を深化させた研究報告書で、「可塑剤等は、樹脂に結合されていないので、分子運動で樹脂内を移動し、樹脂表面に浸出する」として、家電製品からのフタル酸エステル類の移行量をIPA法で測定しています。
 測定したフタル酸エステルは、DMP、DEP、DIBP、DNOP、BBP、DEHPで、移行速度(μg/m2/h)を24時間吸着して測定しています。

4.市場の動向

2016年8月に、JEMA、JEITA、CIAJ、JBMIAの4団体から「EU RoHS指令制限対象フタル酸エステルに関する注意点-詳細版9)」が発行されました。電気電子関連の川中中小企業は、フタル酸エステルに関する知見が乏しく、このガイドが参考にされています。
このガイドに「EEEに接触する副資材(接着剤、包装材など)、治工具類(機器メンテナンス用副資材含む)について、フタル酸エステルが含まれる場合に移行する可能性はある」と記述されています。可能性は「副資材や治工具の使用状況や製品との接触条件等により汚染のリスクやRoHS対応のための管理方法は異なる。」としていますが、可能性の部分が削除されて、「EEEに接触する副資材、治工具類にタル酸エステルが含まれる場合に移行する」として、次のような要求がされています。

  • 倉庫にPVC関連部品(フタル酸エステル含有)と非PVC部品を格納している場合の移行量(コンタミ)の推定と対応
  • 作業台で組み立て作業をしている場合の移行量(コンタミ)の推定と対応
  • PVCマットを敷いたコンベア上で運搬中のトレーから部品が落下した場合の移行量(コンタミ)の推定と対応
  • PVCの柄の着いた工具を触ったあとの移行量(コンタミ)の推定と対応
  • PVC関連部品(フタル酸エステル含有)を長年扱ってきている場合の床や壁への移行量(コンタミ)の推定と対応

「ここが知りたいRoHS指令」だけでなく、MTEP10)などの支援機関やKISTECセミナー11)などでの対応相談が急増しています。
 相談には、フタル酸エステル類のコンタミを除去剤(洗浄剤)や床などの清掃業者の紹介要請もあります。
 4団体のガイドにあるように可能性ですので、ケースバイケースになり、一律的な回答ができなく、回答を留保しています。
 3項移行に関する論文にあるように移行は瞬時ではなく、ある程度の密着時間により移行するようです。

この辺りについて、有識者に具体的に検討をお願いしています。また、IEC62321-8(フタル酸エステル分析法)ではなく、簡易分析、スクリーニング分析法についてもご検討をいただいています。11月末頃に発表を予定しています。

(松浦 徹也)

1)経済産業省生産動態統計月報
2)塩ビ工業・環境協会
3)DEHPの分類
4)DEHPのSDS
5)食品衛生調査会毒性部会・器具容器包装部会 合同部会の審議結果について
6)器具及び容器包装並びにおもちゃの規格基準の改正に関する薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会報告について
7)材料表面に密着させた吸着材へのフタル酸エステルの移行
8)家庭電化製品・OA機器から発生するフタル酸エステル類及びリン酸エステル類
9)EU RoHS指令制限対象フタル酸エステルに関する注意点‐詳細版
10)MTEP(広域首都圏輸出製品技術支援センター)
11)KISTEC(地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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