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17.10.06

フタル酸エステルの規制状況

このところフタル酸エステル類に関連するご質問や対応のご相談が多くなっています。フタル酸エステルのアメリカとEUでの規制状況を整理してみたいと思います。

1.TSCA1)の規制

アメリカでは、TSCA第6条(§2605:化学物質及び混合物の優先度付け、リスク評価並びに規制)で、リスク評価を行い、EPA長官が不当なリスクがあると判断した場合は、その物質・化合物の製造、加工、商業的流通の禁止または制限をします。
 リスク評価(優先付け)は次の手順2)で行われます。

Chemical Prioritization Process
  • Pre-prioritization
    パブリックコメントも受けて優先順位付けをする。
  • Candidate selection
    TSCA作業計画3)により次の特徴を持つ作業計画化学物質を優先させる。
    • 有害性、ばく露、潜在的な生物蓄積性の可能性物質
    • ヒト発がん性物質
    • 高急性または慢性毒性物質
  • Initiation
    90日間のコメント期間を設定する。
  • Screening review
    合理的に入手可能な次の情報を検討する。
    • 化学物質の有害性およびばく露の可能性
    • 残留性および生物蓄積性
    • 潜在的にばく露された、または感受性の低い亜集団
    • 飲料水の重要な供給源の近くに貯蔵
    • 使用条件または化学物質の使用条件の大幅な変更
    • 製造または加工された化学物質の量または体積の大幅な変更
  • Proposed designation
    化学物質を高優先物質または低優先物質のいずれかに指定する。
    • 90日間のパブコメの実施
  • Final designation
    優先度の高い物質の指定を確定し、直ちにリスク評価を開始する。
  • リスク評価が正当でないと判断した場合、優先度の低い物質の指定を確定する。
  • Revision of designation
    EPAは、入手可能な情報に基づいて優先度の低い物質の指定を優先度の高い物質に変更することができる。

2019年12月22日までにEPAは少なくとも20種の化学物質を高優先度、20種の化学物質を低優先度と指定しなければならないとしています。
 TSCA第6条による規制は「CFR title 40・Chapter I・Subchapter R」4)の「§745 塗料中の鉛」「§749 冷却システムにおける六価クロム系水処理薬品」「§761 PCB」などがあります。
 改正TSCAによるリスク評価物質として次が示されています。

  • アルキルピロリドン類
  • ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)
  • 塩化メチレン
  • N-メチルピロリドン(NMP)
  • トリクロロエチレン(TCE)

現時点ではフタル酸エステル類は俎上に上がっていません。
 改正前には、「TSCA Work Plan for Chemical Assessments:2014 Update」5)の「Action Plan Chemicals」として、次をリストしていました。

  • Dibutyl phthalate(DBP)
  • Butyl benzyl phthalate(BBP)
  • Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Di-n-octyl phthalate(DNOP)
  • Di-isononyl phthalate(DINP)
  • Di-isodecyl phthalate(DIDP)
  • Di-isobutyl phthalate(DIBP)

なお、Di-n-pentyl phthalate(DnPP)は商業化されていないため、当初計画から削除しています。
 FDAでは化粧品に使用されている次のフタル酸エステルを例示6)しており、規制のための調査を行っています。

  • Di-n-butyl phthalate(DBP)
  • Dimethyl phthalate(DMP)
  • Diethyl phthalate(DEP)

改正TSCAによる規制は今後であり、規制内容に注目されます。

2.CPSIAの規制

アメリカの消費者保護は、消費者製品安全委員会(CPSC)7)が、消費者製品安全法(CPSA)8)により行っています。
 CPSAは、2008年8月に中国など東南アジアで生産された玩具などの消費者向け製品の事故、リコールなどのトラブルによる社会不安の高まりがあり大幅に改正され、消費者製品安全性向上法(CPSIA)9)が制定されました。なお、CPSIAは2011年に鉛の基準が改定10)されています。
 CPSIA第108条では、子供用玩具または育児用品に次のフタル酸エステルを0.1%以上含有させてはならないとしています。

  • Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Di-n-butyl phthalate(DBP)
  • Butyl benzyl phthalate(BBP)

同時に、暫定処置として3歳未満の子供の口に入る育児用品には、次のフタル酸エステルを0.1%以上含有させてはならないとしています。

  • Diisononyl phthalate(DINP)
  • Di-isodecyl phthalate(DIDP)
  • Di-n-octyl phthalate(DNOP)

さらに、Chronic Hazard Advisory Panel(CHAP)11)は、次の4つのフタル酸エステルを0.1%を超えるレベルで子供の玩具及び育児用品に使用することを恒久的に禁止することを推奨12)しています。

  • Di-isobutyl phthalate(DIBP)
  • Di-n-pentyl phthalate(DPENP)
  • Di-n-hexyl phthalate(DHexP)
  • Di-cyclohexyl phthalate(DCHP)

CPSIAは、すべての子供用製品は、第102条により該当する連邦児童の製品安全要件に準拠するために、CPSC認定ラボでテスト13)することを求めています。
 規制緩和の情報もあります。CPSCは8月30日、特定プラスチックにおけるフタル酸エステル試験を除外する規則を官報で公示14)し、9月29日から施行することを発表しました。
 この規則では、次のプラスチック類には特定のフタル酸エステル類(6種類)が原材料として使用されず、また使用される特定の添加剤にも許容濃度を超えて含有する可能性はないことが示されたため、分析試験の実施を除外することで、企業の負荷を減らす内容となっています。

  • ポリプロピレン(PP)
  • ポリエチレン(PE)
  • 汎用ポリスチレン(GPPS)、中衝撃性ポリスチレン(MIPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、超耐衝撃性ポリスチレン(SIHPS)
  • アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)

ショア硬度90以上では、フタル酸エステルを0.1%以上含有する可能性が少ないとするコメントがあります。ショアー硬度70以上の硬質塩ビ(PVC)には、フタル酸エステルが0.1%以上含有しないとする基準を提案するコメントもあります。
 このコメントに対して、ショアー硬度試験は、プラスチック中の低濃度のフタル酸エステルの存在の指標として使用することを意図したものではないこともあり、硬度でフタル酸エステル量を評価することは、見送られましたが、興味ある考え方です。
 また、PVCはリサイクルによるコンタミの可能性を指摘しています。
 企業としては、このような見解が示されることは歓迎できます。

3.Prop65の規制

カリフォルニア州法にProp65(1986年安全飲料水及び有害物質執行法)があります。州はアメリカ合衆国憲法15)第1条よる「輸入税または関税を賦課すること」「平時における軍隊もしくは軍艦の保持」「他州もしくは外国との協約もしくは協定の締結」「戦争行為」などを除いて、連邦の権限の枠外において自由な「留保権限」を保有しています。
 カリフォルニア州では、TSCA、CPSIAと同時にProp65が適用されます。Prop65は“The List”16)に収載されている約1,000物質が対象となります。
 “The List”には、次のフタル酸エステルが収載されています。

  • Butyl benzyl phthalate(BBP)
  • Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Di-isodecyl phthalate(DIDP)
  • Di-isononyl phthalate(DINP)
  • Di-n-butyl phthalate(DBP)
  • Di-n-hexyl phthalate(DnHP)

“The List”は、がんや先天性欠損または他の生殖有害性を引き起こすことが知られている広範な天然および合成化学物質が含まれています。これらの化学物質には、農薬、一般家庭用製品、食品、薬品、染料、または溶剤に添加剤または成分が含まれています。
 リストされた化学物質は、製造および建設においての使用、自動車排ガスなどの化学プロセスの副生成物も入っています。
 “The List”には、含有濃度規制値はありません。発がん性物質の重大なリスクレベル(NSRL)または生殖毒性物質の最大許容用量レベル(MADL)が採用されています。例えば、BBPは「1,200μg/日(経口)」となっています。
 製品使用によるばく露量の推計は、現実には専門家に委ねますが、企業の責任で行います。FAQ17)では、推計は非常に複雑で、仮に警告は不要であることを証明するには負担があるとしています。このような状況もあり、企業は警告表示をしているようです。

4.REACH規則及びRoHS(II)指令の規制

REACH規則の制限(附属書XVII)18)では、玩具または育児製品に次のフタル酸エステルを含有させることを禁止しています。
 Entry No51:Di-n-butyl phthalate(DBP)、Di-(2-ethylhexyl)phthalate/Bis(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)、Butyl benzyl phthalate(BBP)0.1%
 Entry No52:Di-isodecyl phthalate(DIDP)、Diisononyl phthalate(DINP)、Di-n-octyl phthalate(DNOP)0.1%
 なお、玩具指令(2009/48/EC)では、発がん性、生殖細胞変異原生及び生殖毒性(CMR)のカテゴリー1A、1B及び2の物質は、玩具や玩具の構成部品に使用することができません。
 REACH規則の認可(附属書XIV)19)では、次のフタル酸エステルが認可対象物質となっています。

  • Bis(2-ethylhexyl)phthalate/Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Butyl benzyl phthalate(BBP)
  • Di-butyl phthalate(DBP)
  • Di-isobutyl phthalate(DIBP)
  • Bis(2-methoxyethyl)phthalate
  • Di-pentyl phthalate
  • N-pentyl-isopentyl phthalate

Candidate List20)には、次のフタル酸エステルが収載されています。なお、認可物質に特定されてもCandidate Listには残っています。

  • Di-n-hexyl phthalate(DHexP)
  • Di-pentyl phthalate(DPP)
  • Di-isopentyl phthalate(DIPP)
  • N-pentyl-isopentyl phthalate
  • Bis(2-methoxyethyl)phthalate
  • Di-isobutyl phthalate(DIBP)
  • Butyl benzyl phthalate(BBP)
  • Bis(2-ethylhexyl)phthalate/Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Dibutyl phthalate(DBP)

RoHS(II)指令は2015年6月4日に、次のフタル酸エステルを附属書IIに追加する改定をしました。発効は第8、第9製品群を除いて2019年7月22日、第8、第9製品群は2021年7月22日です。閾値は0.1%です。

  • Bis(2-ethylhexyl)phthalate/Di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)
  • Butyl benzyl phthalate(BBP)
  • Di-butyl phthalate(DBP)
  • Di-isobutyl phthalate(DIBP)

RoHS(II)指令の含有濃度の分析方法はIEC62321です。フタル酸エステルの分析方法はIEC62321-8:201721)で、2017年3月に発行されました。
 対象物質は、前記4種類のフタル酸エステルに加えて、Di-n-octyl phthalate(DNOP)、Di-isononyl phthalate(DINP)とDi-iso-decyl phthalate(DIDP)の3種類のフタル酸エステルが含まれています。

5.まとめ

前項でお示しした欧米で規制されるフタル酸エステルを一覧表に整理します。

アメリカ EU
TSCA FDA CPSIA CHAP Prop65 制限 認可 CLS RoHS
(II)
Bis(2-ethylhexyl) phthalate
Di-(2-ethylhexyl) phthalate(DEHP)
Bis(2-methoxyethyl) phthalate
Butyl benzyl phthalate(BBP)
Di-butyl phthalate(DBP)
Di-cyclohexyl phthalate(DCHP)
Di-ethyl phthalate(DEP)
Di-isobutyl phthalate(DIBP)
Di-isodecyl phthalate(DIDP)
Diisononyl phthalate(DINP)
Diisopentyl phthalate(DIPP)
Dimethyl phthalate(DMP)
Di-n-hexyl phthalate(DnHP)
Di-n-hexyl phthalate(DHexP)
Di-n-octyl phthalate(DNOP)
Di-n-pentyl phthalate(DPENP)
Dipentyl phthalate
Dipentyl phthalate(DPP)
N-pentyl-isopentyl phthalate

フタル酸エステルは移行性が高いとされて、企業は対応をどこまで行うのかを悩んでいます。これらの規制への対応については、有識者のご意見を頂いて、近々に稿を改めてご説明したいと思います。

(松浦 徹也)

引用
1)http://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title15/chapter53&edition=prelim
2)https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/prioritizing-existing-chemicals-risk-evaluation
3)https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/tsca-work-plan-chemicals#updates
4)http://162.140.57.127/cgi-bin/text-idx?SID=8f7cee133f4f5fc327359c83ccff5d7b&mc=true&tpl=/ecfrbrowse/Title40/40cfrv34_02.tpl#0
5)https://www.epa.gov/sites/production/files/2015-01/documents/tsca_work_plan_chemicals_2014_update-final.pdf
6)https://www.fda.gov/cosmetics/productsingredients/ingredients/ucm128250.htm
7)http://www.cpsc.gov/
8)https://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/blk_media_cpsa.pdf?epslanguage=en
9)https://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/blk_pdf_cpsia.pdf
10)https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/BILLS-112hr2715enr/pdf/BILLS-112hr2715enr.pdf
11)https://www.cpsc.gov/chap
12)https://www.cpsc.gov/PageFiles/169902/CHAP-REPORT-With-Appendices.pdf
13)https://www.cpsc.gov/Business--Manufacturing/Testing-Certification
14)https://www.federalregister.gov/documents/2017/08/30/2017-18387/prohibition-of-childrens-toys-and-child-care-articles-containing-specified-phthalates-determinations
15)http://constitutionus.com/
16)https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list
17)https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-faqs#
18)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/restrictions/substances-restricted-under-reach
19)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/authorisation/recommendation-for-inclusion-in-the-authorisation-list/authorisation-list
20)https://echa.europa.eu/candidate-list-table
21)https://webstore.iec.ch/publication/32719

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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