本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。


HOME > 経営をよくする > ここが知りたいREACH規則

ここが知りたい REACH規則

コラム

REACH検索

17.03.17

カリフォルニア州法“プロポジション65(Prop65)”の動向

アメリカの化学物質規制は、EUと同様に厳しく管理されています。アメリカは連邦法と州法で規制され、法律文の記述方法が項目番号の採り方を含めて難解で戸惑います。
 日本企業にとっては、TSCA(The Toxic Substances Control Act of 1976)の修正法(The Frank R. Lautenberg Chemical Safety for the 21st Century Act:LCSA)1)とProp65(Health and Safety Code:CHAPTER 6.6. Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986)2)の動向に関心が集まっています。
 Prop65の動向をLCSAによる修正TSCAと絡めて解説します。

1.連邦法と州法の関係

Prop65はカリフォルニア州法で、TSCAは連邦法です。アメリカは、連邦制を採用していますので、連邦法(federal law)と州法(state law)との関係の理解が必要となります。
 連邦と州の関係は建国に遡る必要がありますが、アメリカは州が集まってできた国家で、州は独自の法と司法システムを備えています。考え方は、連邦憲法第10条3)により、連邦の権限は州および国民から委譲されたものとされ、州に禁じられていない権限は、それぞれの州または国民にあるという、上下関係が一般的な感覚と違っています。
 連邦で定めることができる法律は、通商関係法、知的財産法、破産法などです。
 各州は、条約の締結や貨幣の鋳造などが禁止事項となっていますが、これらの禁止事項以外は、連邦憲法に反しない限り、各州は自由に州憲法や州法を制定することができる強大な権限を持っています。
 州により規制がバラバラでは不都合な面もあり、包装材への重金属規制の州法のひな型をCONEG4)で作成したように、共通化の動きもあります。
 包装材については、“The Toxics in Packaging Clearinghouse”5)が州を越えて対応しています。

2.TSCAとProp65の関係

TSCAは、2016年6月22日に1976年施行後40年余経過し修正されました。修正TSCAは連邦法典(Code of Federal Regulations)のTITLE15 CHAPTER 53--TOXIC SUBSTANCES CONTROL6)として収載されています。
 Sec 2617 (Preemption:優先権)に、州法との規定があります。Sec 2617はTSCA第18条とも記述されますが、(e)項(1)(A)で「2016年4月22日前に、州または州の行政機関の法規制により、化学物質の製造、加工、商業的流通、使用や廃棄を禁止する別の方法で、とられたあらゆる措置、義務や制定を引き続き執行する。修正TSCAは、州または州の行政機関の法規制の権限に優先すると解釈されてはならない。(部分意訳)」とされています。
 また、(B)で「修正TSCAは、2003年8月31日に有効であった州法によりとられた措置に優先すると解釈してはならない。(部分意訳)」としています。
 Sec 2617は、連邦内の規制を統一する手段としたEPA(U.S. Environmental Protection Agency)の手順で、EPAの優先範囲が明確にされています。
 Prop65は、Sec 2617により、州法として継続して施行されます。

3.Prop65の改正内容

Prop65の正式名称は、「カリフォルニア州 1986年安全飲料水及び有害物質執行法(プロポジション65:Proposition65 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986)」で1986年に採択され、1987年1月に発効しています。
 対象となる化学物質は、“The List”7)として告示されています。
 Prop65は、2つの内容で規制されています。

  • 飲料水への排出規制(§25249.5)
  •  “The List”の発がん性物質と生殖毒性物質を飲料水源に流入させる、またはその可能性がある場合において、その排出を規制する
  • ばく露前の警告(§25249.6)(施行規則 §25601)
    • 消費者あるいは作業者が、“The List”の発がん性物質と生殖毒性物質についてばく露する可能性がある場合、事業者に対して事前に警告する
    • 明確で妥当な警告を与えることなく、発がん性物質と生殖毒性物質ついて意図的なばく露することを規制するものである。
    • ばく露とは物理的な体表面への接触、吸引、摂取とする。

2016年8月30日に施行規則 §25601(明確な妥当な警告Clear and Reasonable Warnings)等の警告表示に関する条項の改正が告示8)され、2018年8月30日から施行されることになりました。
 警告表示は、“§25602 消費者向製品暴露警告”“§25604 環境暴露警告”“§ 25606 職業暴露警告”9)などが要求されています。
 事業者の対応のために、新旧対比表“TITLE 27 CAL CODE OF REGS. ARTICLE 6 CLEAR & REASONABLE WARNINGS: Side-by-Side Comparison”10)も用意されています。
 消費者向製品暴露警告では、シンボルマークと警告文を表示するが発がん性物質の場合は次となります。

Warning symbol

Warning symbol

WARNING
“This product can expose you to chemicals including [name of one or more chemicals], which is [are] known to the State of California to cause cancer.
For more information go to www.P65Warnings.ca.gov.”

[name of one or more chemicals]の部分に、該当する物質名をいれます。
 生殖毒性物質の場合は“cancer”を“birth defects or other reproductive harm”に変え、発がん性と生殖毒性物質の両方の場合は、“cancer and birth defects or other reproductive harm”とします。
 発がん性と生殖毒性物質をそれぞれ含有する場合は、“This product can expose you to chemicals including [name of one or more chemicals], which is [are] known to the State of California to cause cancer, and [name of one or more chemicals], which is [are] known to the State of California to cause birth defects or other reproductive harm. For more information go to www.P65Warnings.ca.gov.”となります。
 www.P65Warnings.ca.govは、OEHHA(環境保健有害性評価局)が、新たに開設したProp65の警告サイトで、FAQもあります。
 FAQで、ペナルティの説明として「違反した場合の罰則は、他の法律による罰に加えて、各々の違反に対して1日あたり2,500ドル以下の罰金が科せられる。」とあります。

4.BPA(ビスフェノールA)の追加
 Prop65の対象物質は“The List”に約1,000物質が収載されています。“The List”の項目は、「物質名」「毒性の型」「リストメカニズム」「Cas No.」「収載日」「NSRL or MADL(μg/day)」です。
 リストメカニズムは、「AB」:信頼できる機関、「SQE」:州の有資格専門家、「FR」:正式に表示または識別される、「LC」:労働法による、が記載されています。
 発がん性物質の重大なリスクレベル(NSRL)または生殖毒性物質の最大許容用量レベル(MADL)が採用されている化学物質については、「NSRLまたはMADL」欄に記載されています。 リスクアセスメント文書が電子的に入手可能なNSRLまたはMADLについては、文書へのハイパーリンクが提供されています。
 Prop65には、濃度限界という概念はなく、NSRL または MADL(μg/day)が示されているだけです。
 自社製品の用途からばく露量を確認して、NSRLまたはMADL以下であることを評価する義務があります。
 2015年5月11日にビスフェノールA(BPA Cas No. 80-05-7)を追加しました。女性の生殖毒性で、固形物質からの皮膚ばく露を3(μg/day)としています。
 BPAは、容器や電気電子製品で利用されるポリカーボネートやエポキシ樹脂などの原料と使用されます。
 Prop65の“The List”は製品含有を規制するものではないのですが、BPAが収載されたことで、無影響量以上にばく露する場合に警告ラベルの貼付が義務となります。
 無影響量以下の場合は、警告ラベルの貼付は不要です。
 また、現状は「固形物質からの皮膚ばく露」が制限内容で、経口についてのMADLは出されていません。
 BPAは、EU REACH規則の附属書XVII(制限)に2016年12月にEntry No6611)で感熱紙への200ppm以上の含有が制限されました。
 また、2017年1月12日に認可対象物質候補(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation)12)として収載されました。
 “The List”には、EU RoHS指令で新たに追加された「DEHP」「DBP」「BBP」「DIBP」も収載されています。
 アメリカとEUの動きは調和されているようで、今後も注視する必要がありそうです。

(松浦 徹也)

1)https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/frank-r-lautenberg-chemical-safety-21st-century-act
2)http://leginfo.legislature.ca.gov/faces/codes_displayText.xhtml?lawCode=HSC&division=20.&title=&part=&chapter=6.6.&article
3)http://constitutionus.com/
4)http://www.coneg.org/
5)http://toxicsinpackaging.org/
6)http://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title15/chapter53&edition=prelim
7)https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list
8)https://oehha.ca.gov/proposition-65/crnr/notice-adoption-article-6-clear-and-reasonable-warnings
9)https://govt.westlaw.com/calregs/Browse/Home/California/CaliforniaCodeofRegulations?guid=IEEE4581360F542F7B90A8E6E87DCAC3D&originationContext=documenttoc&transitionType
=Default&contextData=(sc.Default)

10)https://oehha.ca.gov/media/downloads/crnr/side-sidearticle6090116.pdf
11)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/restrictions/substances-restricted-under-reach
12)https://echa.europa.eu/candidate-list-table

中小企業の方を対象として、海外ビジネスに関する質問を無料で受け付けています。
中小機構「中小企業国際化支援アドバイス

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

このページの先頭へ